パーキンソン病の方から「ビーズの家に決めた」理由を聴きました

こんにちは。ホスピス住宅ビーズの家、ケアマネジメント室の落合実です。

以前このコラムで、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の方とご家族に向けた記事を書いたところ、想像していたよりずっと多くの方に読んでいただきました。
そして、それと前後して増えてきたのが、パーキンソン病の方からのご相談です。

「がんではないのですが、うちも相談していいんでしょうか」

電話口で、そう切り出される方がほとんどです。
「ホスピス」という言葉のイメージが、相談の入口でひとつ壁になっているのだと思います。

そこで今日は、実際にパーキンソン病とともにビーズの家で暮らしている方に、私が直接お話を聴きました。
「どうして、ここに決めたんですか」
その答えを、できるだけご本人の言葉のまま、お伝えします。

「がんじゃないのに、ホスピスですか?」から始まった

お話を聴かせてくださったのは、Sさん(仮名)。パーキンソン病と診断されて長らく自宅療養を経て、今はビーズの家で暮らしています。

最初にビーズの家の名前を聞いたとき、正直どう思われましたか。そう尋ねると、Sさんは少し笑ってこう言いました。

「自宅での生活が大変にはなってきたけど、がんじゃないのに、ホスピスですか、って。最初はそれしか思わなかったです。もう長くないと言われたわけでもないのに、なんでここを勧められるんだろうって」

パーキンソン病は、診断からの時間が年単位、ときには十年単位に及ぶご病気です。
ゆっくり進行し、その途中には、ご自宅での暮らしが少しずつ難しくなる時期が訪れます。けれど「終末期」ではない。
だからこそ、病院と自宅のあいだで、行き先が見つからない方が多いのです。

Sさんもそうでした。見学に来られた日のことを、私もよく覚えています。
ここから先は、Sさんが話してくれた「決めた理由」を、順番に書いていきます。

理由1:薬の時間を、「私の時間」で飲める

Sさんが最初に挙げたのは、お薬のことでした。

私の場合、(薬を)飲む時間が30分ずれると、体が動かなくなる。施設ではみんな同じ時間に配られるから、その30分がどうしようもなかった。また通院などの予定によっては飲む時間をずらしたいときもある。それが叶わないことも多い」

パーキンソン病の方にとって、お薬は「飲めばよい」ものではなく、「その時間に飲まなければ意味がない」ものです。効いている時間と切れてくる時間の波があり、その波はお一人おひとり違います。

ビーズの家には看護師・介護士が24時間います。だから、お薬の時間も「全員いっせい」ではなく、主治医の指示やご本人の希望に沿ってその方のご希望に合わせることができます。朝の一回を早めたい方、食事との間隔を細かく調整したい方、それぞれの体に合わせて組み立てていく。

特別なことをしているつもりはありません。ただ、Sさんにとっては、それが「ここに決めた」いちばんの理由だったそうです。

理由2:「動ける時間」と「動けない時間」があることを、分かってくれる

二つ目は、一日の過ごし方でした。

「午前中は動けるけど、夕方は本当にだめ、という日があるんです。それを『さっきは歩けてたじゃないですか』と言われるのが、いちばんつらかった」

パーキンソン病には、同じ日のなかでも、動ける時間と動けない時間があります。
周りから見ると「さっきは元気だったのに」と映ることが、ご本人にはとても苦しい。これは、相談の場でも本当によく伺う言葉です。

ビーズの家には、起床時間も消灯時間もありません。動ける時間にやりたいことをして、動けない時間は休む。それを「わがまま」と受け取らないこと。
私たちが大切にしているのは、看護師や介護士である前に、同じ家で一緒に暮らす隣人として、決まりやルーティンに当てはめるのではなく、その波ごとその方を知っていくことです。

もちろん、施設や病院の決まった時間割が合う方もいらっしゃいます。ただSさんには、「波があることを前提に組んでくれる暮らし」のほうが合っていた、ということなのだと思います。

理由3:「危ないから」と、取り上げられなかった

三つ目は、少し言いにくそうに話してくれました。

「危ないから座っていてください、危ないからやりますから、って。心配してくれているのは分かるんです。でも、自分で歯を磨くとか、自分でお茶を淹れるとか、そういうのを全部やってもらうと、自分がだんだん小さくなっていく気がして」

医学的に見れば、「安全」を優先して手を出すのは正しい判断です。私たちも安全をおろそかにはしません。
ただ、「安全」のためにその方の「自分で」を全部引き取ってしまうと、その方の暮らしから、その方自身が少しずつ消えていく。

神経難病のケアのコツの1つに「待つこと、見守ること」があると思っています。

だからビーズの家では、代わりにやって差し上げるのではなく、一緒にやることを大切にしています。時間がかかっても、途中で休んでも、その方のペースで。
「自分で」をあきらめないためのお手伝いが、私たちの仕事だと考えています。

理由4:この先のことを、急かされない

Sさんは、これからのことも話してくださいました。

「この病気は、先が長いんです。だから『次はどこに行きますか』と聞かれ続けるのが、いちばん疲れる。ここは、それを聞かれない」

ホスピス住宅は、制度上は「家」です。病院のように「落ち着いたら退院」という区切りはありません。入院したくなれば入院もできますし、状態が落ち着けばそのまま暮らし続けられます。

そして、進行に合わせて必要になる医療ケアも、住まいを変えずに増やしていけます。飲み込みの変化に合わせた食事の形、痰の吸引、経管栄養。「処置が増えたから、また次の場所を探さないと」という心配を、ここでは減らしていけます。

先のことは、一緒に、少しずつ考えればいい。ビーズの家では、入居されるすべての方と、これからの過ごし方を一緒に考える時間(ACP)を持っています。
答えを急がせるためではなく、その方が何を大切にしているかを、私たちが知るためにです。

理由5:住み慣れた地域に、そのまま住み続けられる

そして、Sさんが「これは意外と大きかった」と付け加えてくれたのが、地域のことです。

「引っ越すなら、専門の施設も考えたんです。でも、そうすると何年も診てもらっている先生と離れることになる。ここなら、今までどおりの病院に通えるし、月に一度の家族会にも顔を出せる。それが、決め手のひとつでした」

パーキンソン病は、長くつきあうご病気です。だからこそ、何年もかけて築いてきた関係が、暮らしの土台になっています。お薬の調整を任せてきた神経内科の主治医。同じ病気の仲間と情報を交わし、弱音も言える家族会や患者会。行きつけのお店、近所の顔なじみ。

ビーズの家は福岡市内と近郊にあり、ご希望であれば通い慣れた病院への受診はそのまま続けられます。通院の付き添いや送迎も、一部自費にはなりますがご相談いただけます。外出に制限はないので、家族会や患者会への参加も、ご友人との集まりも、これまでどおりです。

「家」というと、建物の中の暮らしを思い浮かべがちです。けれど私は、その方の暮らしは家の中だけで完結しないと考えています。

通い慣れた病院、仲間のいる会、歩き慣れた道。そうした地域とのつながりごと、その方の暮らしの続きを支えたい。専門の施設に移ることで得られるものもあります。ただSさんは、これまでの「地域での暮らし」を手放さないことを選ばれました。

聴いてみて、私が考えたこと

Sさんの五つの理由を並べてみると、大切にしていることそのどれもが、実は特別な設備や高度な医療の話ではないことに気づきます。

薬の時間を自由にできる、守れること。波があることを分かってもらえること。「自分で」を取り上げられないこと。先のことを急かされないこと。通い慣れた病院や仲間のいる会と、地域とつながり続けられること。

言葉にすれば当たり前のことです。けれど、その当たり前が「病気だから」という理由で削られていく場面を、私は看護師としてたくさん見てきました。パーキンソン病のように長くつきあうご病気ほど、その当たり前を守れるかどうかが、毎日の暮らしの質そのものになります。

ビーズの家は、まだ試行錯誤を続けている立ち上がりたての場です。Sさんの話を聴きながら、できていないことも含めて、もっと聴いていかなければと思いました。

おわりに — 「がん(末期)ではないから」と、閉じないでください

いかがでしたでしょうか。

もし今、パーキンソン病のご本人やご家族で、「うちはホスピスの対象ではないだろう」と、相談の前に扉を閉じている方がいらっしゃったら。その扉を、一度だけ開けてみてほしいと思います。

もちろん、ご自宅で暮らし続けることも、病院や他の施設で療養することも、それぞれに素晴らしい選択肢です。

ただ、その二択や三択に「病院でも自宅でもない、家」という選択肢が、すでに福岡にあることを知っていただきたいのです。

「雰囲気」は、言葉よりも雄弁です。ご興味のある方は、ぜひいつでも見学にお越しください。

この記事の執筆者:落合 実(看護師/ホスピス住宅ビーズの家ケアマネジメント室)

株式会社beads 取締役 / 株式会社 i & i 代表取締役
都内大学病院、訪問看護ステーションにて看護に従事。緩和ケア認定看護師教育課程修了後に都内にて訪問看護ステーションを共同創業。
2019年、福岡市内にUターン移住し訪問看護ステーションを新たに創業。2022年、株式会社beadsの取締役就任。ホスピス住宅ビーズの家にてケアマネジメント室を立ち上げ、スタッフの教育やケアの質管理に携わる。

見学予約・入居相談はこちら
お電話でお問い合わせ

平日9:00〜18:00(土日・祝日を除く)

LINE相談&見学予約
メールでお問い合わせ

お急ぎの方はお電話でご連絡ください。最短即日受入実績あり。

がん末期、神経難病、ターミナル期の方
※介護区分に関わらずご入居可能です