ALSの方の介護に「限界」を感じたあなたへ — それは頑張りすぎのサインかもしれません
こんにちは。ホスピス住宅ビーズの家、ケアマネジメント室の落合実です。
この記事を読んでくださっている方の中には、もしかすると今、ALS(筋萎縮性側索硬化症)のご家族を介護されていて、「もう限界かもしれない」と感じておられる方がいるかもしれません。
ホスピス住宅ビーズの家にも、ALSを含む神経難病の方々がお住まいです。
そんなご家族に向けて、臨床でよくお伝えすることをまとめてみました。
「自分」を責めないでください
ALSのご家族を介護されている方とお話ししていると、疲れ果てた多くの方が、同じことを口にされます。「こんなことを思う自分は、家族として失格なんじゃないか」「弱音を吐いてはいけない」。そうやって、限界を感じている自分自身を、さらに責めてしまうのです。
限界を感じているのは、ご家族が弱いからではありません。ALSなどの介護は、そもそもご家族だけで背負いきれるものではないからです。
私自身、家族の介護をした経験があるので、お気持ちはお察しします。そのうえで、まずは「限界を感じて当然なんだ」、そしてそれは「ご家族のせいではない」ということを、お伝えしています。
なぜ、ALSの介護は「限界」に来やすいのか
「自分の頑張りが足りないせいだ」と感じてしまう前に、ALSの方などの介護がなぜこれほど大変なのかを少しだけ整理します。
ALSは、少しずつ進行していく病気です。診断からの時間は年単位に及ぶことが多く、その過程で手足の動き、言葉、飲み込み、そして呼吸にまで変化が現れていきます。介護するご家族には、主に次のような負担が重なっていきます。
- 24時間、途切れない——夜中の体位交換、こまめな痰の吸引。眠れない日が続きます。
- 医療的なケアが増えていく——吸引、胃ろうや経管栄養、在宅酸素、人工呼吸器の管理。専門的な手技を、ご家族が担うことになります。
- コミュニケーションが変わっていく——言葉が出にくくなり、これまでのように気持ちを通わせることが難しくなる場面が増えます。
- 重い選択を何度も迫られる——胃ろうを造るか、気管切開をするか、人工呼吸器をつけるか。命に直結する判断が、いくつも訪れます。
これだけのものが、ご家族の肩に、少しずつ何年も重なっていく。限界を感じないほうが、むしろ不自然です。あなたの頑張りが足りないのではなく、ALSの介護とは、そういう構造のものなのです。
「限界=施設に入れるしかない」では、ありません
「もう限界」と感じたとき、多くのご家族が「では、施設に入れるしかないのか」と考えます。そして同時に、「住み慣れた家から引き離してしまうのではないか」という、新たな罪悪感を抱えてしまいます。
けれど、「限界」の先にある選択肢は、「自宅で頑張り続ける」か「病院・施設に入る」かの二択だけではありません。その手前にも、横にも、頼れる手立てはいくつもあります。
- 訪問看護・訪問介護を増やす——医療的ケアや見守りを、専門職と分担する。
- 重度訪問介護を使う——長時間の介護を支えてくれる制度です。
- レスパイト入院・ショートステイ——ご家族が一度しっかり休むための、短期の預け先。
- ホスピス住宅という「第三の場所」——「病院でも自宅でもない、家」。これについては、最後に少しだけお話しさせてください。
大事なことは、「自分だけで抱える」を手放していいということです。ご本人にとっても、あなたにとっても、結果的に穏やかな時間が長くなることが少なくありません。
「家族」にしかできないことは、「家族」で居続けることだけ
長い在宅介護を続けるうちに、ご家族はいつのまにか、娘さん・奥さま・ご主人などである前に「介護者」になっていきます。吸引の担い手、夜間の見守りの担い手、判断の担い手として。
これは、頑張っていないという話ではまったくありません。むしろ頑張りすぎてしまうからこそ、心も体も少しずつすり減っていくのです。
僕がいつもお伝えしているのは、「ご家族にしかできないことは、ご家族でいることだけ」ということです。吸引やおむつ交換などは、私たち専門職が代わることができます。ご家族は手をかけたいところには手をかけていただき、つらいところは私たちのような専門職が代わるーそうやって、「家族としての関係そのもの」を守ることも、僕は大切なケアの一つだと考えています。
あるご夫婦のこと
以前、ALSのご主人を、奥さまが自宅で介護されているご家庭に関わったことがあります。
その奥さまは、本当に献身的な方でした。ご主人の好みやこだわりを一つひとつ丁寧に聞き取って、それに応えていくうちに、いつのまにか「スーパー介護士」と呼びたくなるような域に達しておられました。体位変換も、おむつ交換も、ご主人の細かな要望に、ほぼ完璧に応えていました。
でも、その完璧さの裏で、奥さまは少しずつ燃え尽きようとしていました。ご主人の要求の基準も上がっていくなかで、個別性の高い要求に応えられない支援者は、一人、また一人と拒否されるようになりました。そうして、すべてが奥さまお一人にのしかかっていく。その全部に応え続けることは、どう考えても無理があったのです。
そこで僕は、奥さまとこんな話をしました。「家族にしかできないことって、実は『家族で居続けること』なんじゃないでしょうか」と。奥さまのような完璧な介護は、僕たち専門職にはできないかもしれませんが一般的なケアは提供することができます。ただ、ご家族として隣にいることは、あなたにしかできません、と。
そこから、少しだけご本人、奥さまに妥協してもらいました。「いい体位変換」「いいおむつ交換」は、もしかしたら少し減ったかもしれません。ご主人にとっては、自分専属の「スーパー介護士」を手放すことでもありました。
それでも——奥さまに余白が生まれてから、ご夫婦で外出する機会が増えていきました。そして僕が何より印象に残っているのは、お二人のあいだに、お父さんとお母さんの、ごく普段どおりの何気ない会話が戻ってきたことです。介護の指示や確認ではない、ただの夫婦の会話が。
お二人は介護する人、される人の関係ではなく、もう一度「ご夫婦」に戻っていかれたのだと思います。
最後に — 「家でありながら、支えがある」場所のこと
私たちが福岡で運営しているホスピス住宅ビーズの家は、制度上は住宅型有料老人ホーム、つまり「住宅」です。その家に、24時間の看護・介護体制がついています。痰の吸引、胃ろう、在宅酸素、気管切開カニューレ、人工呼吸器の管理といった、ALSで必要になっていく医療ケアにも対応しています。言葉が出にくくなった方とは、文字盤を使ってお気持ちを伺うこともしています。
面会時間に制限はなく、外出も自由。ご家族はいつでも会いに来られます。「家のようでありながら、専門職の支えがある」——そんな第三の場所です。
家のような場所を創りたいと頑張ってきましたが、ビーズの家の良さは、「距離感」を調整できるぶん、かえって「ご家族」でいやすいことだと思っています。
24時間ご一緒に居たいときは、一緒にいることができる。少し離れたいときは、離れることができる。
「ご家族でいる」という関係を守るうえで、自宅より柔軟な場所でありうると、実感しています。
社会資源を活用し、選択肢を増やしてほしい
自宅か、病院や施設か、ホスピス住宅か。どれを選んでも、間違いではありません。そして、どの道を選んだとしても、ここまでご家族を介護してこられたあなたが、十分すぎるほど頑張ってきたことは、変わりません。
「限界」を感じたなら、それは終わりのサインではなく、「そろそろ誰かに頼っていい」というサインです。高齢者とご家族、その住まいを地域で支える「地域包括ケアシステム」の肝は、適材適所で社会資源を有効に活用することにあります。
ご家族が「限界」を感じたときは、ご家族を責めるべきときではなく、ご本人とご家族を支える社会資源を見直すタイミングなのかもしれません。一人で答えを出さなくて、大丈夫です。
もし福岡で、こうした選択を一緒に考える相手をお探しでしたら、いつでもご相談ください。
お急ぎの方はお電話でご連絡ください。最短即日受入実績あり。
がん末期、神経難病、ターミナル期の方
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