ホスピス住宅ビーズの家の新人教育で大切にしていること

ホスピス住宅ビーズの家ケアマネジメント室の落合と申します。ビーズの家での新人教育の研修責任者も担っています。

ビーズの家は、福岡市の南片江と伊都の杜にあるホスピス住宅です。住宅型有料老人ホームに訪問看護・訪問介護が併設されており、終末期や医療依存度の高い方が、最期まで「家」として過ごせる場を24時間体制で支えています。新しく加わった仲間をどう育てるかは、私たちにとってケアの質そのものを左右する大切なテーマです。今日は、ビーズの家の新人教育で大切にしていることを、いくつかの角度からお伝えします。

「正解が一つじゃない仕事」だからこそ

ホスピス住宅のケアの中心になる在宅介護看護の仕事には、正解がひとつとは限りません。病院や施設のそれとは異なり、同じ疾患や症状でも、その方の暮らし方や価値観によって、「良いケア」の答えは変わります。だからこそ、ビーズの新人教育の出発点には、「一人で抱え込まないこと」を置いています。

入職時にお渡しする『オリエンBOOK』の冒頭にも、こう書いています。「迷ったら聞く。困ったら言葉にする。できるようになるまで、ちゃんと一緒にやる」。技術や知識の習得スピード以上に、まずこの姿勢を共有することを大切にしています。

1年間の「地図」を手渡す

新人に手渡す『オリエンBOOK』は、入社から1年までの「やること」「相談先」「成長の記録」を1冊にまとめた、新人専用のガイドです。集合研修、面談シート、業務チェックリスト、事例検討シートが時系列で並び、迷ったときに戻ってこられる「地図」として手元に置いていただきます。

オリエンBOOK

主体はあくまで新人本人。プリセプターや管理者はそれを並走して支える役割です。「焦らなくて大丈夫。少しずつ、確実に」という言葉を、ブックそのものが体現しています。

法人全体で、ひとりを支える

新人を支える役割は、現場のプリセプターだけではありません。研修責任者、研修担当者、各事業所管理者、プリセプター、所属スタッフ、そして新人本人まで、それぞれの役割を明文化し、法人全体でひとりを支える体制を組んでいます

精神的な支援も独立した役割として位置づけ、社内に相談しにくい内容には社外の窓口も用意しました。「相談したいけれど、相手を選びたい」という気持ちが起きるのは自然なこと。それもあらかじめ設計に織り込んでいます。

「家」や「地域」に配慮した振る舞いを、到達目標に

ビーズらしさが最もよく表れていると思うのは、入職15日目の面談シートに「『家』や「地域」に配慮した振る舞いができる」という到達目標が明記されている点だと、私は思っています。

私たちが働く場所は、施設や病院ではなく、入居者の「家」です。挨拶の仕方、物の置き方、退室時の声かけ──そのすべてが「ここは誰かの暮らしの場である」という前提から始まる。技術の到達度より先に、この感覚を体得してもらうことを目指しています。

また病院や施設などと異なり、入居者やそのご家族のケアは「ビーズの家」だけでは完結しません。我々から率先して地域に出て、地域に根差し、地域の方々と協働、連携していくことこそが、その人らしさを支えるために大切です

ビーズの家では、入社2日目、15日目にケアマネジメント室による「家」と「地域」でケアをするための座学を用意していることも新人研修の特徴です。

デイリー共有シートで、悩みや成功を言語化する

入職2日目から15日目までは、毎日「デイリー共有シート」を使います。朝に今日の重点目標と不安を共有し、昼に軌道修正、退勤時に「今日できたこと」「今日学んだこと」「判断に迷って質問したいこと」を言葉にしていきます。

新人期に大切なのは、できなかったことよりも、できたことを自分の言葉にしていくこと。先輩からの一言フィードバックも毎日添え、翌日への不安をその日のうちにほどく設計にしています。

解決する事と同じくらい言語化して「伝える」方が大切だと思い、コミュニケーションの生まれるシートとなることを期待しています。

「私たちが支えているもの」を、事例で問う

15日目研修と30日目研修では、新人ひとりひとりが受け持ち利用者の事例検討シートを作成します。

生活史、大切にしている価値観、代理決定者、1週間の生活全体──これらを丁寧に書き出した上で、「病院や施設と異なり、家にいるからこそ、私たちが支えるべきものは何か」という問いに向き合います。

算定の根拠も自分で調べていただくため、制度理解と価値観の理解が同時に深まる構造になっています。

既卒の方にも、ステップは飛ばさない

経験豊富な方が入職されることもよくあります。これまでのキャリアは最大限に尊重しますが、「即戦力だから」とステップを飛ばすことはしません。リアリティショックが最小限になるよう面談を重ね、確認のためにも同じ手順を踏んでいただきます。

むしろ既卒の方には、「新人として、チームに対して良き質問者・批判者になってください」とお願いしています。新しい目で見える違和感が、組織の発達につながると、私は考えているからです。

おわりに

いかがでしたでしょうか。ホスピス住宅ビーズの家はまだまだ立ち上がりたての組織です。色々な課題はありますが、利用者を支えるスタッフがビーズの家にとって1番大切です。
ケアマネジメント室として、これからも新人教育がどのようにあるべきか試行錯誤しながら、よりいい研修の企画や学習環境を支援していきます。
ビーズの家のスタッフは、専門職である前に、入居者と同じ家で過ごす「隣人」「協同者」であってほしい。そのために、一年かけてゆっくり育っていただく。これからも、慌てず、奪わず、伴走する教育を続けていきたいと思っています。
ぜひご興味のある方は、見学にいつでもお越しください。

▶ 採用情報

この記事の執筆者:落合 実(看護師/ホスピス住宅ビーズの家ケアマネジメント室)

株式会社beads 取締役 / 株式会社 i & i 代表取締役
都内大学病院、訪問看護ステーションにて看護に従事。緩和ケア認定看護師教育課程修了後に都内にて訪問看護ステーションを共同創業。
2019年、福岡市内にUターン移住し訪問看護ステーションを新たに創業。2022年、株式会社beadsの取締役就任。ホスピス住宅ビーズの家にてケアマネジメント室を立ち上げ、スタッフの教育やケアの質管理に携わる。

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